トイレの話(美術館のトイレ事情とトイレットペーパー等の部屋)

美術館・博物館・公共トイレの体験レポート

ロンドン市内で訪れたミュージアムのトイレットペーパーに関する分類一覧表(1997年作成)です。
サラ・ルーカス 《The Great Floods》
これは芸術作品です。このサイトの最初にした理由は、芸術といっても認めない人や忌み嫌う方々がいるのは承知で、炎上をするほど閲覧する人もいないと思うので掲載します。もう、20年前にロンドンのICAの展示スペースでインスタレーションを 観た印象は驚愕と斬新です。場所はバッキンガム宮殿から徒歩数分の美術館というよりも学芸員養成機関の発表場所のような感じです。 日本には同じような機関はないと思います。古ぼけた館内は薄暗く怪しげな催しを開催していたが観る人はなく、 この部屋も70‐80㎡くらいの広さの床にポツンと便器が置かれているだけで、《The Great Floods》と銘打たれ、 入口前の左側に受付があり若い女性が座っていた。 偶然入ったので何が何だか理解できなかったが、徐々に判り始めると急に面白くなり、「Photo OK?」と聞くと、ここにサインしろという。 商業目的で使わないという契約をしたらOKだということで、住所・氏名を記入した。「利用しても良い」ということだが、30分余りの間誰も来なかったとはいえ、とても用を足す度胸と勇気と自信(あそこ)もないのでただ観て座って 感触を確かめただけだが、それでも人が入ってきて話しかけられたらどうしようかとドキドキした。
写真でお分かりのように、下水処理の配管設備がしてあり、多分キチンと流れるとは思う。右手のレバーを捻ると確かに水は流れた。 それにしてもと暫く作家の意図を考えた。日本では一部で存在が知られていたが異端という立ち位置で、アブジェクトアーティストの扱いであった。 デュシャンの《泉》を意識したことは間違いないだろうが手が込んでいるし使用できなくともよかろうとは彼女は考えなかった。 垣根をつくりたくなかったのかもしれない。元々中国・米国は仕切りがないトイレが当時は多く(旅行者が宿泊するホテルではない)、大学や田舎にいくと当たり前のように存在した。当時は、美術館の一部でドア下が20㎝位隙間のあるのが不思議ではなかった。 あれから時がたち日本では男子が個室で座って小用する時代になった。とすれば、間仕切りがなくてもかまわないということだろうか。そもそもこの便器は英国でも珍しく、穴が前についている。女性用に多いと聞く。さすれば、男が座ってするように設計されている 便器なのではないかと想像している。 つまり、先進的なデザインで、時代を先取りした提案型の作品ということになる。
 
(参考1)20世紀芸術に一番影響を与えた作品
デュシャン《Fontaine》R.MuTT1917の署名

(美術館PDから転載)
R.MaTTは現地では大便の意味を含んでいる。
(参考2)ピエロ・マンゾーニ《芸術家の糞30g》

(美術館PDから転載)
デュシャンから始まりマンゾーニ他直接・間接に影響を与え続けている。 芸術とは?という問いに教科書的答えはないが感動を与えたらそれは芸術ではないだろうか。感動を受けた人にとっては。
  せっかくなので、日本からも1点紹介する。といっても、これは作品なのかよく判らないが京の区立美術館の男子用のトイレで普通に使用している小便器なのだが、両隣とは違う明らかに異なる旧式の小便器が目の少し上の位置の鏡に映り込み、 瞬間ギョッとする仕掛けなのである。なんということのない他愛もない話だが、結構面白がる人がいるらしい。しかし男性専用なので女性は見ることは叶わない。不公平な気もするし、わざわざレプリカを展示するのもどうかしていると考えて、この程度で妥協したのだろう。それにしても英断である。 区立という狭い範囲で影響力も限られるからという考えなら反対に面白くない。それこそ性差の問題になるが目くじらを立てても些末な問題だ。 私が利用した時にはデュシャンの作品写真と美術館の意図の書かれた説明文が添えられていた。芸術と反芸術は常に表裏一体で繰り返される運命にあるのだろう。 進化なのか変化なのか。答えはなく判断するのは観るものに委ねられている。
ここからが、ロンドン市内の美術館のトイレとトイレットペーパーの写真である。 
街中の公衆トイレ
街中の公衆トイレは絶対数が少ない。また、日本と違い、デパート・駅・企業ビル内の トイレは簡単に利用できない。あっても、有料である。また、パスワードが必要でレジのチケットに印刷されているので、 なにか買わないと利用できない。だから、店自体がそれほど清掃が行き届いていなくてもトイレは結構きれいだ。 また、公衆トイレは一回ごとに閉めて熱湯による自動洗浄をするので時間がかかる。くれぐれもホテルで済ませて、 大便をするという事態は避けるように体調管理が不可欠である。デパートは各階になくハロッズあたりでも4・5階に あっただけじゃないかな。有料だけにきれいではある。日本では公衆の見えるワンボックスのトイレを利用する女性はいないだろう。 最近は男も個室で座らないと小用ができないというのが増えて困る。本当に大便がしたいときに駅・公共施設・デパートで利用できない。 本当に時代に適正な対応ができない人間は絶滅するしかないのだろうか。
 ヘイワードギャラリーのトイレ
シンプルで清潔なトイレである。 便座とカバーが木製で座った時のぬくもりが良い。 ロンドンの美術館はほかにもあり、ウォシュレットが世界を席巻しても残してほしい。自宅を新築した時に一つは木製にしたかったが、果たせなかった。 事情が色々ありまして。
向こうはトイレットペーパーがほとんどの館で大きい。盗まれる心配はあまりない。日本ではオイルショックの 時に企業トイレから消え去ってしまったと聞く。 出来心かも知れないが、「もし”神”に見離されたら、自らの手で”運”を掴む」(トイレの落書きより)ことにならないとも限らない。 くれぐれもポケットティシュは必需品だ。 便座に紙を引かないと出来ないという清潔感の人ならホテルで朝準備を怠ってはいけない。レバーは大体上について付いているので忘れずに流しておくこと。
 大英博物館のトイレットペーパー
大英博物館
 
さすが、ブリティッシュミュージアムである。度肝を抜かれたティッシュで、色が ピンクの紙にペーパータオルはライトブルーである。 大きさは99㎜x124㎜の2枚重ねで日本と変わらないが後にも先にも ド派手ピンクは初めてだ。清潔で使い勝手の良いトイレであることは充分に満足できる要件ではある。
コートルード美術館   便座が丸く、扁平で座りにくい。大きなお尻の肉厚な方に向いている。 ロンドン大学の付属美術館で一般の人があまり訪れない場所だ。 とはいってもこのタイプがロンドンのミュージアムには意外と多い。 ここでは深く触れないが、イタリア・ミラノの空港トイレの小便器が高く、 爪先立ってしたときの屈辱的な思い出が蘇る。 一応身長は168㎝あるが、足の長さが足りないらしい。イタリア人でも私より低い人は結構いるぞと思いながら トランジットだけなので二度と来るかと思いながら空港を後にした。オランダはもっと高いと聞いているが訪れたことはない。
 ナショナルギャラリー この部屋の色合いはなかなかない。床・壁と便器・トイレットペーパーとコントラストが芸術的である。 まさかここにまで神経を配っているのかと思ったが落ち着いて出すものは出せるシチュエーションになっている。 とにかく必要最小限の設備しかない。 床のタイルは大きい程清潔に保ちやすいが値が張るのでこのサイズが当時は一般的である。家庭と同じように手前にマットを敷いているところもある。 後程紹介したい。後のタンクも考えると余分に思えるが日本ではほとんどについている。無論我が家のトイレにもしっかりとタンクはある。
ロイヤルアカデミー オブ アーツ  小便器が懐かしい。昔日本にもあった気がした。 用を足しながらおつりが来ないように一歩前に出て竿をきちんと 持って狙い定めてしろ(とわざわざ貼り紙のある公共トイレが日本にはある。別項に写真を掲載)ということだ。これは下部の跳ね返りはないので安全・安心の便器ではなかろうか。 常に清潔にに保持するメンテナンスは大変ではないだろうか。
 テートギャラリー
日本なら、近代美術館である。今は少し役割が違うようだが、当時は最先端のモダンアートの展示館であった。 このペーパー入れはとにかくでかくて大きい。盗めるなんてもんじゃない。でも、紙が途中で無くなった時にどうするのか不思議ではある。 他にも同じような大きさのペーパーケースがあったが、今はセンサーでも付けて少なくなったら補充するシステムにしているのかな。んな訳ないな。
ヴィクトリア&アルバート博物館(その1)
 
V&A博物館ののトイレットペーパー
ヴィクトリア&アルバート博物館(その2)
この博物館は、とにかく展示点数が半端ないくらい多い。普通トイレは館内で共通しているものだが、 ここは2種類あった。多分今は改装されているとは思う。こことケンウッドとアプスリーハウスが水を流すのにレバーを引っ張る方式であった。 日本では便器の後ろにタンクがあるが、英国では見ることはない。だからお分かりのようにすっきりしている。 水を流すようにレバーも背後の壁の回しやすい位置にある。日本の便器の後ろで押すタイプだと、足で押すなどという人が少なからずいることが判明している。 最近はこの種の”すべらない”話をすると相槌をうつ芸能人も多い。女性のほうが多いかもしれない。英国ではまず、 足がそこまで上がらない位置にある。とはいっても上のトイレはすっきりとして現代的だが、取り換え用の紙を床にむき出しでおいてあるのは日本的な感覚だと” ありえへん”ということになるだろう。いずれにしてもこの博物館は広くて迷子になる。トイレの場所は最初に確認しておかれることを進める。 夏休みなどは見学コース案内がある。有名作品のレプリカも多くデスマスクも結構あるので注意はしておくこと。 下半身に葉っぱなどで隠してないので念の為。一応パンフレットのコピーとミケランジェロのダビデ像(レプリカ) (突然目の前にダビデ像が現れびっくりした。同じ体験を少し味わってください。)を添付する。
 バンクサイドギャラリー
 
20年前でも、ごみ箱が置いてあるのはこことICAだけだった。ごらんのように小便器は旧タイプで配管が剝き出しになっている。で も利用者が多い割にはきれいな方で便座が黒くて重いのは理由を調べていないが結構多くの美術館が黒い便座である。しかも重い。
ナショナルポートレートギャラリー
 
ダイアナ皇太子妃のポートレートで有名なところで、女性には人気だ。今でも根強い人気を誇っているがもうポートレートは外したかもしれない。 床タイルは大きくて汚れの目立たない模様で清涼感に満ちていた。小用含めシンプル・モダンで気持ちの良いトイレである。
 アプスリーハウス(現在はウエリントン美術館)

紙がドアについているので左右どちらでも使いやすい。洗面所も綺麗であった。ロンドンで一番有名な大邸宅で調度品はどれも一流である。
  
水を流すレバーも旧式だが、小便器も配管工事を後からしたようだ。英国のハウスと云われる大邸宅を改装した美術・博物館は概してトイレ が旧式で使いにくい。中世の名残だろうか。この床をみると汚せないと思うのは私だけだろうか。
 ロンドン博物館

平面絵画作品より、ロンドンの街の歴史や暮らしぶりが展示紹介されている博物館である。王室も含めてロンドンの市民生活が垣間見える。
 
この小便器は低い位置にある。ここは親子ずれが歴史を学びがてら訪れるようで、個室の紙くずなど子供が多い証でもある。
 ケンウッドハウス

 
美術館の敷地は広く、子供が凧揚げをやって遊んでいた。 ロンドンの市内ではあるが、電車とバスを乗り継ぐので観光客はあまり行かないようだ。ロンドンを一望できる高台にある高級住宅地に囲まれている。 例えが巧く言えないが日本ならさしづめ庭園美術館が世田谷にあるか、板橋にあるような感じである。広さはドームより広く野外コンサート会場 を先週までやっていたようで、仮設トイレがかなりの数設置されていたが、囲いがされ確認は難しかった。ロンドンまで行くならぜひ寄ってほしい。 ただしトイレはお世辞にも綺麗とは言い難い。館内ではなく旧式のままである。ただ職員などは別のトイレだとは思う。中世のお屋敷のトイレ事情は 日英とも不浄な場所と考えがちだったのではあるまいか。 フェルメールが思わぬ場所に展示され、誰もいないことを幸いと直接手で触れてしまった。 (決してやってはいけないこととは解っていたが、とにかく誰もいないし、監視員もいない。あの衝動には勝てなかった。反省❢)
20年前、バスは禁煙で罰金が、なんと1,000ポンド(バス代がアーチウェイから美術館まで50ペンスだというのに見間違いかと何度も確認した。 日本円なら当時換算で20万円)おったまげた。
知らない絵画の前で模写をしているご婦人がいらした。アマチュアだというが、許可するなんて懐が深いですね。フェルメールほどじゃないけど 名画が随所に散りばめられていて貴族の古き良き時代の雰囲気が垣間見えた。バットを持っている女性にも会った。行きは50分歩き、帰りは循環バスで10分だ。
ウォーレスコレクション
 
4か国語で寄付を依頼するパンフがあった。日本語で書いてあったので日本人が多いのだろう。 いまなら中国・韓国語のパンフになっているのではないだろうか。下の2枚を含めて中世の個人の邸宅をそのまま美術館にしている。 大邸宅の生活の名残が見える気がした。 2枚重ねのマットを敷いてあり、どれだけ清潔を保持しようとしているか伝わる。 便座は木製で、カバーを省いている。とても合理的で日本でも存在するが支持したい。丁度団体のガイドについて話を聞いた。 (解らないなりに必死さと雰囲気で理解)数人が椅子を持ち歩いてガイドの話を聞いていた。とても親切だ。説明的ではなく自分 で探し観察し描き説明するという学習効果を習っているような気がした。案の定、先生向きの資料を販売していた。
 
 ICA
 
ICAは「美術館・ギャラリー・古典的建造物ではなく、喜びとバイタリティと勇気の源になる大人のための遊び場」とある。 アートの実験場だと思う。 トイレにポスターが貼ってあったのはここだけだった。利用者もすくなく綺麗なトイレである。 サラ・ルーカスの展示していた館だが、トイレは機能的で清潔である。
 カムデン・ロックの公衆トイレ 
 
リトルベニスから50分の船旅(30人乗り程度)のさきにある、 だまし絵で知っていた場所でわざわざ遠回りした。英国の優雅な邸宅を観ながらのんびりする川下りもいいものである。船賃は当時3.7ポンド。 公衆だけあって、便器は金属製である。唯一小用の上の壁に落書きがあり、日本と同じでホッとしたと同時に読めないので残念。 文化を理解するには言語は不可欠だ。特に短期旅行者には。帰国してから解読を試みたが解らなかった。
 どぎつい赤の中に小便をしなさいということで的を目がけてはずさないようにきれいに使う。ここは20年前で車いす用の トイレが二つもあった。こういう懐の深さが英国の伝統として息づいているのだ。現在テロに晒されて気軽に旅行もしにくくなっているが体感して欲しい。 このゆとりを。赤・青・黄の3原色を配したセンスが見事である。この隣にだまし絵がある。
バービカンアートセンター
  
 
とにかく、真夏だというのに人がいない。美術館に人がいないのだ。無論大英博物館やテートギャラリーなどの観光名所には大勢 の観光客がいるのに少し離れると途端に無人になる。日本も同じだからあまり言えないが、英国でもそうなのかと改めて思った。日本は観るというより歩く。 散歩する感じで、絵の前に10秒いないと云われるが、それも寂しい。だから当然トイレはきれいである。いつでも安心して利用できる。 
一足早く番外編 
  米国のNY編が遅れているので取り合えず掲載
米ニューヨークのグッゲンハイム美術館のトイレに設置された純金製の便器。 イタリアの芸術家マウリツィオ・カッテラン氏の「アメリカ」と題された作品で、実際に使用することが可能。盗難などを防ぐため、トイレの外にはガードマンが立つ。(2016年09月15日) 【AFP=時事】

INAXの黄金トイレとサラ・ルーカスを合わせたようだが、警備員がいるのが違う。中々ドアの前で待たれたら出るもんじゃない。 運を掴まずレバーをもぎ取ったら金属探知機に引っかかるかな。それとも、出る都度、入り確認するのかな。純金なら削るくらい簡単だと思うが。にしても「アメリカ}という題が気になる。

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